2020-04-03から1日間の記事一覧

水底金波銀波2 1.冒頭

水底金波銀波 小林千三 何でも、暗い上り道を歩いていた。匂いの無い風が吹く、遠い夜空の辺がどこか薄青く見える、一人きりの夜道だった。目と鼻の近くにははっきり闇がある。先刻通ってきた山の小道から落ちる脇にあった小さなお堂か社か、木製の古びた屋…